鮭いおぼやのはなし 鮭川のかおり 中村直人氏寄稿

私たちには馴染みの深い鮭なのですが、世界に視野を広げた場 合にはごく限られた地域でしか繁殖していないことが知られていま す。回遊性なだけに到るところで捕獲されますが、こと繁殖に限って は北半球の北緯30度から70度の河川流域に限定されるのです。そ れは落葉広葉樹の生育帯と重なることが判明しています。

鮭と落葉広葉樹(ブナ属)の分布

鮭川のかおり

鮭と落葉広葉樹(ブナ属)の分布

<北半球のブナ属>
<太平洋さけ:6種>
ブナ       ヨーロッパブナ
イヌブナ     オリエンタルブナ
タケシマブナ アメリカブナ
タイワンブナ メキシコブナ

 

日本におけるブナ帯分布 「日本のブナ帯文化」市川、山本、 斎藤共著、朝倉書店1984

日本におけるブナ帯分布

ブナ林帯からの生成物が薫る

江差港 鰺ヶ沢 笹川流れ 宮古・大槌町 糸魚川 大船渡 石狩川 標津川 三面川
(多様な広葉樹林帯)

ブナ林帯からの生成物が薫る  落葉広葉樹の極相種であるブナや近種の多様な広葉樹 とその混交林(中間地帯)とは、落葉広葉樹が生産した幾多 の有機酸と生態系微生物群などの源物質であり、微生物が 分解した生成物とそれによってもたらされた生態環境をも育 みます。その分解物と微生物性生成物は水によって川に運 ばれ、さらに海に注がれますので、その源流一帯と流域河 川沿岸帯は固有の”薫かおり”を醸し出しています。  山塊の鉱物群とこの分解有機酸や微生物群が母川の生 態系により特異になっていることが、ふるさとおふくろの”薫 り”の違いとなり鮭の嗅覚識別の基としての役割を担ってい ると考えられています。

鮭と落葉広葉樹(ブナ属)

鮭と落葉広葉樹(ブナ属)

林床環境とミネラル成分を供給する花崗岩質の山塊が、落葉広葉樹林を豊かに育みます。